かいじゅうたちのいるところ

精神科クリニック勤務、ということもあり、人と話をすることが多い仕事をしている私。最近は感情労働、という言い方をされることもあり、実際、人と接する中で疲れないよう、自分をメンテナンスするのも必要なスキルとなっている。

たまにコツを聞かれるので、だいたい答えとしてはまとまっている。短時間でも好きな音楽を聞いたり、活字を読むことはとても効果的。では、そんなとき何が起きているかというと、「心」の機能から離れる方法をとっているのだと思う。「心」を専門に扱う仕事なのに離れていいの? と言われそうだが、むしろ「心」からは離れた方がいい、という考え方は最近よくある。認知行動療法の一つで、「ACT(Acceptance and Commitment Therapy)」という考え方もある。

かなりざっくりとではあるが、自分の「心」と向き合ったり、深めていったりすると、結局、判断や批判をするばかりで、ネガティブな考えが浮かびやすい。だから、あまり自分の思考にどっぷりはまらず、やれることをやる、というようなことが基本らしい。

このあたりの考え方を使うと、実は睡眠がけっこう楽になる、と思っている。結局、寝る前に1日の検証をするなんて、眠りにとって邪魔にしかならない。人によって眠るためのコツはいろいろあると思うが、自分は色々とうざったい思考が湧き上がって来るときには、その思考を怪物に見立てたりする。そうすると、なんだか知らず知らずに寝てしまう。

特殊なコツかもしれないが、モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』という世界的に売れた絵本があり、最近はなんだかあの絵本の意味がわかる気がしている。なんでも簡単に答えと思われるものに行き着けるような気がする世界で、やっぱり人の心には、「ワケのわからないもの」が住んでいた方が良いんじゃないかなあ。

(umetsu)