数ヶ月ほど前、衝動的に「カルト」作品と呼ばれる韓国映画を立て続けに十数本観た。Google検索で”best cult films, Korean”等のキーワードを入力すると、異なる映画関連のウェブサイトでもランキング上位には概ね同じ作品が登場する。「パラサイト」で世界的映画監督として名を轟かせたポン・ジュノ、ハリウッドでリメイク作品も製作された「オールド・ボーイ」を代表作とするパク・チャヌク、芸術性の高さから欧州での評価が高かったものの、スキャンダルで韓国映画界から追放されたキム・ギドクの作品の多くは韓国映画独特のあくどさ、暴力描写、社会風刺に慣れてくると強い中毒性を持つことが分かった。
多くの映画を短期間で観るとそれぞれの監督が持つこだわりや特徴が作品を超えてはっきりと浮かび上がってくるのが面白い。徐々にストーリーがおぼろげになり、印象に残った映像やキャラクターも夢の中の記憶のように遠のいていった後にまだ心に残るものがあるとすれば、それは自分にとって重要なものなのだと思う。
パク・チャヌク監督の「復讐者に憐れみを」(2002)はコーエン兄弟の「ファーゴ」(1996)を彷彿させる、誘拐をテーマにしたコミカルながらコメディ要素は無きに等しい「すべてが間違った方向に行ってしまう」作品。メインキャラクターに降りかかる救いようのない不幸の根本にあるものは、弱者を食いものにする社会構造や解決できない格差社会問題であり、なぜこの国で「復讐の連鎖」が打ち切れないのかを無言の叫びとともに訴えている気がする。そしてこの映画、聾唖の主人公を演じたシン・ハギュンの演技が飛び抜けて良かった。悲痛な目と表情で苦しみ、悲しみ、怒りを表す演技に国境はなく、言葉の必要性もない。
(Paul)
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[作品リスト]
ポン・ジュノ監督作品
・殺人の追憶(2003)
・グエムル-漢江の怪物-(2006)
・母なる証明(2009)
・パラサイト 半地下の家族(2019)
パク・チャヌク監督作品
・復讐者に憐れみを(2002)
・オールド・ボーイ(2003)
・親切なクムジャさん(2005)
・別れる決心(2022)
キム・ギドク監督作品
・魚と寝る女(2000)
・サマリア(2004)
・弓(2005)
・嘆きのピエタ(2012)