年明けの澄んだ空気のなか、海辺にて
真っ青な無限をめがけて、高く高く
娘が大好きなアンパンマンの、カイトを揚げる
同じ地球上の遠い国で、今この瞬間
戦争で苦しんでいるひとがいる
それどころか、わずか数百キロしか離れていない国内で
被災し、やはり哀しんでいるひとがいる
痛ましいことが起きるたびに
自分になにができるのか、一生懸命考える
信頼できる機関に寄付はすれど
それ以外にできることがほとんどないことに、いつも少し絶望する
私は、DMAT隊員ではないし
救援物資と想いを持って現地に行ったとして
自分が被害者になったり被災してしまっては、本末転倒である
ただただ、遠くからよく祈り
己は、与えられた目の前の人生を精いっぱい生きる。
それが最善なのだと思う。
祈り。この、とらえどころのない行為
祈ることまでやめてしまったら
きっと、奇跡すら起きない
苦しんでいるあのひとが
一刻も早く、家族や友人と逢えて
温かくおいしいものをおなかに入れて
壁と屋根のあるところで、ふたふかのベッドで、安心して眠りについて
明日に怯える毎日から
1日でも早く、開放されますように。
私のこの小さな祈りが
人知れず、ひとりで泣いている貴方のもとへ
どうか確実に、届きますように。
そんな想いをこめて
強風のなか空高く、カイトを揚げる
どこへ向かうとも知れない飛行機が
同じ空を、横切ってゆく
アンパンマンがどんどん小さくなっていく様子を見て
娘が無邪気に、笑っている